ぼくのかぞく
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ぼくの名前はカズホといいます。漢字で書くと『一保』です。おとうさんの名前とおかあさんの名前をひとつずつ取ってくっつけてできています。なんか単純な名前の付け方だな〜とか思うけど、口に出しては言いません。おとうさんがスネそうだからです。
ぼくのおとうさんは探偵です。おかあさんは科学者です。ふたりとも頭がよくてすごいです。
おとうさんは世界中忙しく飛び回ってお仕事してます。世界中のいろんな事件を解決してます。すごいと思います。でも、もうすこしぼくと一緒にいてくれてもいいのにと思います。
おかあさんも、研究とか実験とか、いつも忙しいです。でも結構ぼくと一緒にいてくれます。
おとうさんもおかあさんもいつもお仕事で忙しいけど、寂しくはありません。
いつも、おじいちゃんとかおばあちゃんとか、おとなりの阿笠博士とか、おとうさんと一緒にお仕事してる平次おじさんとか、快斗おじさんとかが、ぼくと遊んでくれるからです。
平次おじさんとか快斗おじさんは、なんかあるたびにぼくのことを
「ほんとにコナンそっくりだな〜」
といいます。
そのコナンってひとが誰なのか、みんな尋いても教えてくれません。ちょっと意地悪だと思います。
ぼくはよくおとうさん似だと言われるので、コナンというひとは、おとうさんにも似てるんじゃないかと思います。ということは、コナンというひとは、おとうさんの親戚か誰かじゃないかと推理しています。
でも、似ていると言えば、おとうさんと快斗おじさんも似ています。でも快斗おじさんは親戚じゃありません。それを考えると、コナンというひとも親戚じゃないのかもしれません。
やっぱりぼくには分かりません。
おかあさんは、たまにメガネをかけます。太い黒ブチのいかついメガネです。だけど、おかあさんは目が悪いわけじゃありません。ダテメガネです。
実験するときとか、論文書くときとか、「頑張らなきゃ!」ってときにかけるみたいです。
でも、はっきりいって、そのメガネは、おかあさんに似合ってないと、いつも思います。どうせかけるなら、フチナシのもっとシャープなかんじのメガネのほうが、おかあさんに似合うと思います。
なんでそのメガネをかけるのかおかあさんに尋いてみたら、
「あら、このメガネは、クラーク・ケントもびっくりのすぐれものなのよ」
と言っていました。
クラークさんというのが誰か分からないので、物知りのおとうさんなら知っているかと思って、おとうさんに尋いたら、
「あいつ、まだそんなこと覚えてたのか」
と言って照れながら笑ってました。
ちなみにクラークさんというのは、スーパーマンの本名だそうです。スーパーマンというのは、ウルトラマンの親戚でしょうか。
実はこのあいだ、引き出しの奥のアルバムから、おとうさんとおかあさんの昔の写真を見つけました。
おとうさんとおかあさんが、ぼくと同じ年くらいのときの写真です。他の何人かの友達と、おとうさんとおかあさんが並んで映っている写真です。他にも、動物園にいる写真とか、阿笠博士とキャンプしている写真とか、たくさんありました。
おとうさんとおかあさんは、こんなちいさいころから仲良しだったようです。
その写真の中で、おとうさんはメガネをかけていました。今おかあさんがかけているあの黒ブチメガネです。あのメガネは、昔はおとうさんのものだったみたいです。
なんとなく、おかあさんがあのメガネを大事にしているわけが分かったような気がしました。
このアルバム、こんなところにしまってないで、他のアルバムと一緒に並べておけばいいのに、と思ったけど、なんだか秘密な気がしたので、また黙って引き出しにしまっておきました。
ぼくがアルバムを見たことは秘密です。
ぼくも大きくなったら、おとうさんや平次おじさんみたいな探偵になりたいです。でも、おかあさんみたいな科学者もいいなと思うし、おじいちゃんみたいな小説家もいいと思うし、快斗おじさんみたいなマジシャンもかっこいいと思います。阿笠博士みたいな失敗ばっかりの発明家はいやです。おばあちゃんはぼくをゲーノージンにしたいみたいですが、それもちょっといやです。
とりあえず、大きくなったとき、探偵でも科学者でも何でもなれるように、今から頑張っています。嫌いなおかずも頑張って食べています。だからきっと大丈夫だと思います。
ぼくは、おとうさんもおかあさんも、他のみんなも、だいすきです。
おわり