妄想劇場 <いたずら>


 くすくすと、双子の楽しそうな笑い声が耳に響く。
 第三音楽室の奥にある、本来なら音楽準備室として使われる部屋で、ハルヒは立ったまま背後から光に貫かれて、倒れそうになる体を前から馨に支えられていた。上半身はボタン一つも外されることなく、ズボンと下着は膝の辺りにわだかまって、ハルヒの動きを妨げている。
「やっ……」
 こんなところで無理矢理及ばれる行為に、何とかして体を引き剥がそうとするのだが、二人がかりで押さえ込まれてはどうしようもない。
「ハルヒ、いやならさ、暴れるより協力したほうがいいと思うけど?」
「そうそう、時間長引けば長引くだけ、誰かが来ちゃうかもね」
 楽しそうに光が右の耳元で、馨が左の耳元で、耳を甘噛みしながら囁く。
 今はまだホスト部営業中で、扉一枚隔てたむこうには、客である大勢の女生徒と他のホスト部員達がいる。この音楽準備室は、お茶の用意をしたり部員達が着替えたりするために使われ、客である少女達が入ってくることはない。しかし、客の少女達が来ることはなくても、他のホスト部員が入ってくることはおおいにありえるのだ。
 もしも、姿の見えないハルヒと双子の様子を誰か見に来たら。
「────っ!」
 その想像に、ハルヒは顔を青ざめさせた。
「光っ、馨っ、なんでこんな……っ」
「「さあ、なんでデショー?」」
 まったく悪びれもせずに、双子はくすくすと笑う。
 いつものように客の女の子達と話をしているとき急に呼ばれてこの部屋へ連れてこられたかと思えばいきなり押さえつけられて、こんなことをさせられている。双子に抱かれることははじめてではないし、それなりに無茶な要求をされたこともあるが、こんな場所でこんなふうにされることなど今まで一度もなかった。
 仕方なく、ハルヒは抗うのをやめて、されるがままになる。双子の真意は分からないものの、彼らにやめる気がないことは明白だ。それなら彼らの言うとおり暴れて長引かせるより、早く終わらせてしまうほうが賢明だ。
 ハルヒの抵抗がやんだことを察して、光が激しく腰を打ち付けてくる。動くたびに繋がった箇所から聞こえる水音は静かな準備室に響いて、羞恥を煽ると共に、部屋のむこうにまで聞こえてしまわないかという不安を煽る。声が漏れないようにとくちびるを噛み締めれば、無理矢理顔を上げさせられ、馨にキスをされ、くちびるをほどかれる。
「んっ……ハルヒっ……!!」
「ああっ!」
 腰を強く掴まれて、いっそう深く抉られたとき、体の中に熱を吐き出されたのを感じる。まるで全部出し切るようにゆるく揺すられて、震えながら目の前の馨にしがみついた。
「光、終わった? じゃ、次僕ね」
 すがり付いてくるハルヒを抱きとめながら、当然のように馨が言う。
「ん、じゃ交代」
 それに光も当然のように答える。
 光に続き馨も受け入れさせられて、これまた当然のように中に出された。馨が体を離し、栓の代わりになっていた肉棒を抜かれると、中に出された白濁液が体内を逆流してくる。
「あ……」
 ふとももを伝う生暖かい感触に、ハルヒはちいさく声を上げた。何か拭くものをと思い、首をめぐらせたハルヒの目に、準備室に置いてあったハルヒの鞄をあさってちいさなポーチを取り出す光の姿が目に入る。
「お、ちゃんと持ってる。えらいえらい」
「光! 人の鞄を勝手に……!」
「んー? じゃあそのままでいる?」
 光からポーチを受け取って、馨が中から取り出したのはタンポンだ。いくら男のふりをしているとはいえ、ハルヒも女として生理用品を持ち歩いていた。
「光、ちょっとハルヒおさえてて」
「オッケー」
 そのちいさな筒状の物体を、ハルヒの中に押し込む。本来の用途とは違うものの、それのおかげでそれ以上精液が垂れてくることはない。
 ほんのすこし腿に流れていた精液はきれいにふき取られ、服を直される。光、馨も服の乱れを直し、まるで何事もなかったかのように元通りだ。
「さ、おしまい。戻っていいよ」
「なに急に……」
 さっきまではここに引きとめようとしていたくせに、今度は早く送り出そうとしている。まるで違う態度の二人に、さすがのハルヒも不審に思う。
 しかし、これ以上ここにいては本当に誰が来るか分からない。早く音楽室に戻ろうと、音楽室への扉に手をかけたハルヒに、背後から光が囁いた。
「女の子たち、まさか誰も思わないよなあ。一緒におしゃべりしてる『真面目で優しいハルヒくん』が、実はほんの数分前までセックスしてて、今もその体の中には精液がいっぱいです、なんて」
「……っ!!」
 顔を赤くして、ハルヒが足を止める。ドアノブにかけられた手は、ノブを回すことなく硬直してしまった。
「殿は絶対気付かないよね。知ったらショックで死んじゃうかも」
「鏡夜先輩とハニー先輩は……どうだろう、気付くかな」
「モリ先輩の嗅覚なら気付くかもね」
「どう思う、ハルヒ」
 ハルヒは顔を赤くしたり青くしたりしながら元凶である双子を睨みつけるも、彼らは一向に動じる様子はない。無駄にさわやかなほどの笑顔を向けてくる。
 そして動けなくなっているハルヒの代わりに、まるで執事のような恭しさでドアに手をかけた。

「「さ、ハルヒ。お客さんが待ってるよ」」



 END