日常風景


 忍というのは、無常な世界だ。
 端的に言ってしまえば、人の命を奪ったり、物を盗んだり、情報を操作して人を操ったり、そんな裏の世界を生業としている。
 その中で、くのいちがその体を使って任務を遂行することは当然のようにある。
 体力的に男に劣る女にとってはそれが武器だ。敵を油断させたり情報を引き出したりするのに、時には忍術よりも非常に有効な手段だ。それをいかに駆使できるかが、くのいちとしての力量を決める。
 だから、くのいちになるということは、誰にでも足を開き自ら腰を振る身体になれということと同じだ。それができなければ到底任務などこなせない。
 任務のために、誰にでも足を開けるように。敵地で捕虜になり輪姦されたとしても、精神崩壊を起こすことなく、むしろそれを利用して任務を遂行できるように。
 だから基本的に、忍の里において、貞操観念というものはあまりない。
 むしろ、持たないように育て上げるのだ。



「あ……ああっ」
 うめくような声が、路地の奥から聞こえる。まだ年端も行かない少女の声だ。そしてそれに重なるように、複数の男の声がする。
 路地のほんの10メートル先は、店が建ち並ぶ商店街だ。今はまだ夕方にもなっていない時間で、外は明るく、当然人通りも多い。ほんのすこし耳のいい者なら、すぐにその声に気付くだろう。いや、この里に暮らす者の半数は忍だ。常人よりも五感に優れている。声に気付かぬはずがない。声だけでなく、そこにいる人の気配にも。何が行なわれているのかも。

 気がついていて──誰もそれを止めようとはしない。

 路地の暗がりでは、サクラといのが複数の男に組み敷かれていた。
 早熟ないのはもう初潮を迎えているが、サクラに至ってはまだだ。そんな幼い身体を、大の大人の男が寄ってたかって輪姦している。
 二人の少女は、久々の休日で、買い物の途中だった。大通りの洋品店で新しい洋服を見て、 可愛い小物屋で新しい髪留めを買って、露店で買った二段重ねのアイスクリームを食べながら歩いているとき男達に囲まれて路地に引き込まれた。



「うう……っ」
 ひとりの男がうめいて身体を震わせ、サクラの胎内に精液を吐き出す。すでに幾人もに注ぎ込まれた膣から、噴き出すようにあふれてくる。そこに破瓜の血は混じっていない。こんなことはもう何度も繰り返された行為で、サクラもいのも、そんなものはとっくに失ってしまっていた。
「おい、終ったんなら早くどけよ。次は俺だからな」
 今まで、まだろくに膨らんでもいない胸にしゃぶりついていた男が、射精の余韻にひたっている男に声をかけた。
「なんだよ、おまえさっきもヤッただろ」
「いいじゃねえか、このガキ、狭くて最高なんだよ」
「まあな、くのいちの女どもはもうガバガバだからな。こういうガキじゃねえとな」
 言いながら、男は、今まで挿入していた男をどかして自分の肉棒をまたサクラの中に埋めた。
 その隣でいのは、四つん這いの姿勢をとらされて、口と肛門に男の欲望を突き刺されていた。男はいのの髪を乱暴に掴んで、思うが侭に口腔に肉棒を出し入れする。だがそれでもいのは成すが侭ではなく、片手で上半身を支えるともう片方の手で嚢を愛撫し、舌でくびれをなぞりあげる。
「はあっ……こっちのガキは、すげえ口ですんのがうまいな。アカデミーでもさぞ優秀なんだろうな」
「ああ…、こいつ、尻は処女だったってのに、こっちもすげえいい具合だぜ。二本挿しいってみるか?」
「ははは、尻初めててで二本挿しは、さすがにマズイだろ。万が一壊して使い物にならなくなったら……っ、ううっ!」
 男が吐き出した精液を、いのは飲み込もうとしたが、すでに何度も飲まされて胸ヤケを起こしていたため、うまく飲み込めずに顔にかけられる羽目になってしまった。



 この里において、強姦・輪姦は日常的にある。
 あまりに日常的過ぎて、誰も犯罪として扱わない。むしろ、優秀な忍を作るための一貫として見られている。加害者に加害者意識はないし、被害者にも被害者意識はない。
 乱暴にしすぎて怪我を負わせたり、性器を使い物にならなくされないかぎり、誰も咎められはしない。この程度で音を上げるようでは、くのいちとして使えないのだ。



 二人の少女を散々に弄ったあと、男達は欲望を吐き出しすっきりした顔で路地を出て行った。
 きっと家に帰れば、すこし怖いが情に厚い女房と、今まで犯していた少女と同じくらいの年齢の子供がいるのだろう。
 それでも彼らには罪悪感などカケラもない。
 たとえ自分の娘が同じ目に合ったとしても──もし娘がこの里で忍をしているなら確実に同じ目に会っているのだろうが──それは何ひとつ、彼らの心に影を落としはしないのだ。



 路地には全裸のまま、精液まみれで転がっている少女が二人。
 そのうち、いののほうが先に体を起こした。そして隣で倒れているサクラの頬を軽く叩く。
「サクラー。ほら起きなさいよ。こんなんで気ぃ失うなんて、くのいち失格よ」
「あ……いの」
 目を覚ましたサクラものろのろと体を起こす。体を起こした途端に、ぐぷりと音がして膣から精液が流れてくる。太腿がベタベタして気持ち悪かった。
 近くに放り出されていた自分のバックを引き寄せるとそこからウエットティッシュを取り出し、身体を拭き始める。
「あーなあに。あんた用意いいじゃない。私にも貸してよ」
 ハンカチで身体を拭っていたいのが手を差し出す。
 身体をきれいに拭って、胎内に吐き出されたものを指で掻き出して、それから散らばっていた服をかき集めて身につければ、すぐに日常が戻ってくる。
 否、輪姦されていたさっきの状況も、彼女らには「日常」で、境目などないのだ。
「あーあ、アイスまだ半分くらいしか食べてなかったのに」
 路地に引き込まれたときに、持っていたアイスは落としてしまった。地面に落ちて土まみれになって溶けているアイスに、いのが残念そうな顔をする。
「いの。また買えばいいじゃない。あたし今度はチョコミントにしよう」
「あんた元気ね。あたし精液飲み過ぎてお腹いっぱいでもう食べたくないなあ」
「何言ってんの!この程度で食事も出来なくなるようじゃ立派なくのいちになれないわよ」
「なによ、あんた全然フェラしてなかったじゃない。ほとんどこぼして飲めてなかったし。そのほうがくのいち失格じゃない? そんなんじゃサスケ君にふさわしくないわね。やっぱりふさわしいのはこのあ・た・し」
「なんですってイノブターー!」
 いつものようにじゃれあいながら、少女達は路地を出て大通りに戻ってゆく。
 これからまたアイスを買って、いくつかの店を覗いたあと、いつものように両親の待つ家に帰ってゆくのだろう。
 路地に残るのは、潰れたアイスクリームふたつと、そこかしこに散らばる、薄暗い路地に落ちる精液だけ。


 忍びの里の、日常風景。


 END.