箱庭の夢 0
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(おかあさん)
だんだんとやせ細っていく手を、どんなに強く握り締めてもどうにもならないのだと知っていた。
泣いたり、寂しがったりすれば、病床の母を困らせるだけだと分かっていた。
だからハルヒは笑うしかなかった。
(わたしは、だいじょうぶだよ)
本当は、泣き叫んですがり付いてわめきたかった。
いっては嫌だと、ずっと傍にいてくれと。
そう声に出して言ってしまいたかった。
(おかあさん、おかあさん)
やがて母は白い布をかけられ、ハルヒは黒い服を着せられた。
静かに横たわる母は、もう笑ってくれない。
呼びかけた声はもう届かない。
どんなに泣き叫んでもすがり付いても母は帰ってこないのだと分かっていた。
もし泣き叫んだなら、それは父を困らせるだけで、なんにも、ならないのだと。
だからハルヒは笑って見せた。
(だいじょうぶ、だよ。わたしは、だいじょうぶ)
ちゃんと、うまく、笑えていただろうか。
どうしても抗えない運命があるのだと、あのとき知った。
どんなに強く望んでも、どんなに激しく願っても、叶えられないことがあると。
だからもう、望むことはやめた。
なんにも望まなければ、失うことも、傷付くこともないから。
────だから、どうか。
To be continued.
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